鼠の騙し討ち

太刀打できますん

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「ひまわり」の感想です。

珍しく最初はネタバレ無しで。と言うか、少しでも普及したい広めたい。こんな、ネットの片隅の駄文で、購入意欲が沸くかどうかは甚だ疑問ですが。


ロリっ娘宇宙人同棲ADVと銘打たれている通り、確かに宇宙人と同棲をするものですが、はっきり言って詐欺です。
1週目はまだ普通のエロゲっぽくて良しとして、2週目はオッサンの半裸を見続けなければいけないと言う苦行を強いてくるもの。しかし、その苦行が後の3週目で生きてくる。

心理描写は、ねちっこい部分やドロドロしたようなものや歪な感じは無く、かなりアッサリと喉を通るので物足りなさは否めません。このライターさんが、そういった腹にもたれる文章を書くと、「ひぐらし」のような幼稚な文章になってしいそうな気配なので敢えて淡々としたモノにしたのか、と勝手に感じ取ったのですが。
しかし、構成自体は割りとしっかりしているので、読んでいく内に夢中になれます。この物語に含まれるSF要素や謎解きも魅力の一つで、次々と出てくる伏線に一喜一憂し続きが気になる展開が目白押し、なのですが、種を明かしてからの吸引力は弱い。それは、この作品が語りたかったことが、SFや謎解きからは離れているから。結局は恋愛を主軸にした物語で、それを彩るエッセンスとしてのSFや謎解きが前に出すぎていると感じるかもしれません。と言ってもSFや謎解きが詰まらないかと言われたら、そうではなく丁寧に作りこんである上質のエロゲ的SF物。
バランス感覚は悪い。
主人公たちを取り巻く環境や、それに立ち向かう姿勢や結論、キャラクターへの感情移入度の優先、ルートの固定、ここぞという場面やキャラクターと一緒に導かれていくような選択肢、バッドエンドのディティール、こういったゲームにしては珍しい18禁シーンでの意義。それらのデザインやセンスは光るものがあります。
ネット上の感想を見ていて良く見かけるのが、下手な商業作品よりも完成度が高い、というもの。確かにそうなのですが、やはりこれが同人ゲームだからこそ、この作品を称えたい。エロゲが好きな人たちが、自分たちの好きなものを作ろうという、製作者の愛がこの作品には溢れている。そんな青臭い作品です。

1300円というコストパフォーマンスだけを見れば無条件でお勧め。
萌えゲが好きで、少しの忍耐力を持った方にもお勧め。寝取られはありませんが、それに近いものはあります。そのシーンが重要なファクターになるので、そこを超えられるかどうか。越えた先に、散々お預けを喰らった先には、もちろんとびきりのご馳走が待っています。ピロートークにはニヤニヤが止まりません。
ロリが好きな人、何をためらう必要がある? 立てよ国民!


では、以下ネタバレで。
読後感は悪い。それは後味の悪さも抱えて行かなければならないと言う、この物語の性質のため。


失敗作と言われ続け、妹たちへの劣等感もあったアクアは自分の存在意義を見出せず、2048年の物語の最初から非常に不安定な心理状況なキャラクター。物語が進むにつれて、出生の真相―――自分が明香里の代わりに作られた事、自分が自分であることを最初から否定されていた事を知り、さらには宗一郎の実験のため明香里の記憶を見せ付けられ、自分という境界線が曖昧になってしまう。
どんどんと自分という形が失われていくわけですけど、そうした状況で自分を保つためには鎧を纏っていくしかなかったのでしょうね。だから、あのような強気なキャラクターで、しかし、他人に指摘されるような弱さを曝け出している。
そこで、鎧を纏っていく以外で自分を保つために彼女へ訪れた答えというのが、他人から認識されるという事。
彼女を彼女として繋ぎとめていたのは、同類のアリエスやアオイではなく、アクアを犠牲者として認識していた宗一郎でもなく、彼女を一人の人間として見ていた雨宮大吾。大吾から認識される事でアクアはアクアである、ということに確信を持て、鎧を脱ぎ、脱がされて、大吾を求めていきます。

しかし、ルナウイルス発症のため、大吾からも名前を呼ばれることが無くなったアクア。結局、大吾が求めていたものは明香里であり、必要なのは代わりとしての自分でアクアではないと、物語の主役は自分ではなかったと、過去の思い出に勝てないと悟り、揺れ続けた心はとうとう砕けてしまう。
大吾の死の間際、アクアはアクアである事をやめて、大吾にセンパイと呼びかけ、アクアは大吾の過去に負けてしまう。

2050年。アオイを失った陽一と、大吾を失ったアクアは互いに代替品を求めるように寄り添い、傷つけあってしまう。
プラネタリウムは所詮偽者に過ぎないけど、その美しさには心惹かれる。けれども、本物の星が空から消えてなくなったとき、それでもプラネタリウムを見続けることに意味があるのか。
では、その星に勝るものを見つけられたら。その本物を越える何かを見つけることが出来たなら、夢の続きを見ることが出来るのではないかと。
陽一は雨宮大吾を超えることで、アクアを救おうとするが、それはアリエスの指摘で覆されてしまう。

僕はただ見ていただけに過ぎない―――アクアの向こう側に、葵の幻影を。

超える、という事は、結局は過去のものに囚われているに過ぎず、囚われているのなら、なにもそれを超える必要は無く、代わりになるもので埋めてしまうことと同じ。
自分が自分で在りたいために、大吾の夢を見るための逃げ道へと陽一を選んだアクアに対し、陽一が陽一で居て欲しいがために、アオイという逃げ道自体―――代替品であることを受け入れているアリエス。自分が自分である事をやめてまで、愛した人のために、その人が愛した人の代替になるということを、自分で選んだのがエピソード2のアクアで、諦めて受け入れたのがアリエス。

アクアのアンチテーゼ的な位置に居るアリエス。ここで生まれる選択肢からのエンディング、「日向葵」が秀逸でした。
夢とも現実とも取れない世界で、全てを蚕食するような真っ赤なヒマワリと、蘇った葵とのイラストは鳥肌物。こういった排他的な自分が作った世界で、自分が磨耗しているとも知らず幸せだけを貪り続ける。麻薬中毒者が薬に溺れるような心地よさが、このエンディングにはあったのですが、ティップスでそれが覆されてしまうのが少々残念。
しかし、それこそがこの作品の根本にあるものだから、終始一貫したものを持っているといえばそうなのですが。

そして、アリエスの動機として、結局は「アリエス」という自我がそこに在るわけで、アクアはアクアであり、アリエスはアリエスである、と誰の代わりでもないと言うことに気づくわけです。

「アリエスは敵わなかったんじゃない。ただ、違っただけなんだ」
「アリエスはアリエスだった―――それだけなんだよ」

僕のことを愛してくれた葵―――。
僕のことを好きだと言ってくれたアリエス―――。
・・・だけど、アクアの代わりにはならなかった。


心の空洞を埋めることは叶わない。それはもう同じものでは埋まらないほど大きな空洞になってしまったから。代替品では無理になってしまった。
一生後悔しても、苦しみ続けても傷つけあったとしてもアクアの傍にいると陽一は言います。二人が互いの想っていた人の姿を重ねて、互いを苦しめたとしても、奇跡を積み重ねていけば、いつか幸せになれるはず、と。
主人公になれなかった二人が、とても儚くて健気によりそって小さな奇跡を紡いで歩んでいく物語・・・で、終わらないのがこの作品。

この作品の一つの特徴として、物事の見え方、というものもあります。
明香という名前の由来は、母である明香里から「里」を取った自分への当てつけと明香里は認識していましたが、大吾や宗一郎から見れば明と明香里から一文字ずつ取って名づけたと認識している。
アクアが知らなかったアリエスの成長、北半球と南半球での水瓶座の見え方、月の18%は地球から見れば表にも裏にもなる、物事はその見方次第で様々な形を取り、その印象をガラリと変える。
ジョニーがミサイルを盗んだアクアのことを失敗作と呼ぶシーンがありますが、これはアクアの反応も含めて非常に堪えた。あのジョニーまでも、アクアをそんな風に見ていたのか、と。
しかし、アクアが作られた目的が成功していたならば、そこにはアクアという人間は存在できていない。失敗作というものが、アクアをアクアにしている要因と考えるのなら、ジョニーはアクアという一個の存在を認識しており、そこには悪戯した子供を叱る、口の悪い老人が居ただけではないだろうか?

アオイとアクアが別個の存在だと受け入れた陽一とは違い、アクアは未だ不安定なまま。終盤の選択肢連発がそれを演出してくれるわけですが、陽一に導かれて彼女の覚悟が定まっていきます。
下の世界に下りてきた彼女が経験してきた事が、過去に起きた奇跡、初恋を越えること敵うことは出来ないけど、それが、今目の前に起きていることから目を逸らす理由にはならないと。
後悔ばかりしていても、目の前にある小さな奇跡―――物事がだんだんと移り変わっていくことに目を向け、受け入れる。

過去の傷を抱えたまま、新しいものへ「逃避する」のではなく、過去の傷に苦しみながらも、今そこにある物の違う形や未知の夢を「探し、挑戦していく」物語。のように感じましたよっと。


次は、明香編。これはアクア編の反証のようなものでしょうかね。興が乗れば続きを書きたいな、なんて。


・・・う~ん、どっかで見たことあるような感想になったぞ?

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Author:あきねずみ

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