鼠の騙し討ち

太刀打できますん

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過ぎたるは及ばざるが如しということがありますが、誠に良い戒めでございます。
馬喰町にお住まいになるご隠居が大そうな信心家で、浅草観世音が信仰で、今日もお詣りをして帰りがけ、蔵前通りを天王橋の前まで参りますてえと、このごろオタクを出したばかりの家。ご隠居さんヒョイと見ますと、丁度亭主が漫画を読もうとするから驚きました。
「ああ、これこれ何をするんだい」
「へえ、漫画を読んでおるのですがねえ・・・」
「では、人を殺すのかい。犯罪者予備軍になって、後に殺生をするな」
「そんなこといった日にゃ、趣味になりません」
「なるもならぬも、私の目に留まった以上はどうしても読ませる訳にゃあいけねえよ。観音様のお帰り道、俺の目に付いたのも助けてやれとのお導きだ。ただ助けろとは言わぬ、金を払って買ったのだろうから、それだけの金を出したら売ってくれるか」
「さようですなぁ、そりゃあもうどなたに売るのも同じでございますが・・・へへ、ちと不作続きで高こうございます」
「千両はしまい」
「ええ、千両は致しません。おまけして二分でございます」
「ああ、もう一足俺が遅く通るとよそ様が殺されるところだ、この漫画、こののち必ず人の目に留まるようなところにはおけんな。なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
因果を含めまして、天王橋から川へボチャンと捨てまして、
「ああ、いい心持だ」
と喜んで帰りました。さぁそれから毎日オタクの家の前を通るたびに、亭主が漫画を読もうとするのを見ては買って燃やしてやりました。
亭主の方ではいい金箱が出来たとご隠居の通る時刻を見計らって漫画を読むようにしておりましたが―――。
休みの日、読み終わった漫画がございません。その時向こうの方からご隠居がやってきました。
「ちょいとお前さん、今日もご隠居さんがやってきたよ」
「うむ、きた、きた、だが今日は、読み終わった漫画もねえ、おい何か本はねえか、週刊誌はどうした」
「溜まってたのは捨てちゃいましたよ」
「しょうがねえな、段々近づいてきたよ、え、何か本はねえか・・・何か・・・ああ、その観音菩薩の経典出しねえ」
「お前さん何するんだよ」
「いいから、いいから」
ここで経典を広げて読む振りを致しております。
ご隠居は見てびっくりしまして、
「これ、これ、何をする。経典を読んで犯罪者予備軍になろうとはなにごとだ」
「へえ、私の趣味でございまして」
「馬鹿を言え、お前さんが読んでいるってことは何か良からぬ事になるに違いない、私の目に留まったからには、どうしても読ませる訳にゃいかねえ。おれが買ってやろう」
「どうも、このごろ経典が不作つづきで」
「経典の不作があるものか、いくらだ」
「お負けして七両と二分」
「安いものだ、さあ、金を渡すよ」
「ありがとうございます」
「おお、よし、おれがもうひと足遅れたら、犯罪者予備軍を作るところだった。こののち必ず人の目に留まるような所には置いておけんな、なむあみだぶつ・・・」
因果を含めまして、経典を天王橋からドブーン。
へえ、お退屈さま。

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あきねずみ

Author:あきねずみ

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