鼠の騙し討ち

太刀打できますん

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「・・・誰だよ、お前」

「は? 何言ってるんですか先輩。とうとう熱が頭に回っちゃいました?」

そりゃこっちが聞きたい。何で俺はそんな事を言った訳なんだ?
夏祭りが催されている広場の前で浴衣を羽織り、こちらに白目の比率が少な目のクリクリした目を向けているのは紛れも無く我が後輩であるところの三条要嬢であり、疑うべき事など何一つとして無い。恐らく、さっきまでの幻覚に魘され、朦朧とした頭で祭り独特の浮ついた空気を嗅ぎ取った挙句、浴衣姿の三条要の姿を目にいれてしまい、いつも通りの日常から少し違うものに当たりすぎたから、だろうか?
自分の中のイメージがその人に合わなかったから、何て事を理由に俺は変なことを口走ってしまったわけだ。普段なら気をつけているのに、だって自分の固定観念だけで世の中回っちゃくれない事なんて分かってんだ、しかし、どうにも背後に佇んでいるコート姿の中年が現れてからおかしくなってしまったようだ。
違うか。現れてからおかしくなったんじゃなく、おかしくなったから、幻覚なんて出てきちまったんだ。引っ込んでろよなちくしょう。

「どうしたんですかー先輩―」
「いやいや、浴衣姿の君があまりにも綺麗に見えたから一瞬誰なのかわからなかったのさ、アハハ」
「ヤダー先輩ったらー。馬鹿でどうしようもないクズなんだから、余計に頭悪く見えるような言葉を吐かないでもらえますかー」
てめーがしゃべるんじゃねえ。うるせぇよ。

幻覚の一人芝居を無視して、しかしその言い訳は良いかも知れないと 「いや、浴衣だったから一瞬誰か分からなくってさ。わりぃわりぃ」 なんて言ってみたりする。
「まあいいです、それより早く出店を回りましょうよ」
「そうだな」 と俺は頷き歩き出す 「とりあえず、何か食う?」
二人して祭りの空気に飛び込む。顔を赤くした青年が大声で騒ぎ、あれも欲しいこれもやりたいと駄々を捏ねる子供の手を親が引き、少しばかり客足の途絶えた的屋のオジサンが周りを見渡し満足げな表情を見せる。

「知ってますか先輩? 今現在、日本と言う国ではアメリカ産の靴が大流行なんですよ?」
「なんだそれ?」
「穴が開いていて・・・ほら、あの子、あの子が履いているサンダルみたいな靴みたいなヤツ」
「なんだあれ?」
「あっちの子も履いてますよね~。なんて言うか、掃き心地が尋常じゃないくらいフィットしてて軽くてイイ感じなんですよっ」
「何て名前なの?」
「同じ様な形をしていますけど、見てくださいっ、花とかハートマークのアクセサリーを付けて、自分だけの靴をコーディネートする事すら可能なのですっ」
「汎用品でオリジナリティ追及してもなぁ・・・で、なんて名前なの?」
「初めはワゴンに捨て値で売られていたにも関わらずっ」 グッと拳を握る 「今では専門店までオープンしているのです・・・」
「お前、血液型って何だっけ?」
「おおらかでお茶目なO型です」
「あの靴、何て名前?」
「私は断然黄色がお気に入りです。欲しいなぁ・・・」
流行に疎い俺たちだった。俺の場合は仕方ないとしても、この女、現役女子大生ではなかろうか? その様なオナゴが流行りに疎いとはこれ如何に?
女子大生といえばアレだ、ケバケバしい化粧してキャバ嬢みたいなカッコして合コン旅行に大忙し、もっと貪欲にハヤリ事に打ち込むべきではなかろうか。

などと言った事はさて置き、互いに様々な話題を避けていたんだと思う。大学の事とか、以前の俺の生活の事とか。
「それにしても、良かったです。本当、先輩が無罪放免で」 思った途端に触れてきた 「お祭りいけなくなるんじゃないかなって心配だったもんで」
「あれ? 祭りって誘う奴居ないから、俺には適当に声かけたんじゃないの?」
「わかってるくせにぃ・・・揚げ足取りはみっともないゾ」
要の細腕から放たれる鋭い左フックが、俺の下顎を喰らい尽くそうと唸りをあげる。俺は避けることも出来ず、まともに脳を揺らす凶拳を喰らい、ちょっと泣きそう。
「フッ・・・」 情けない瞳を斜め下に向け 「・・・良いモン持ってんじゃん」
そんな、男としてのちっぽけなプライドをズタズタにした要嬢はテクテクと先を歩き出した。祭りはまだ、始まったばかりだ。

「でも、ホント、良かったッスよ」
しみじみと彼女は言う。
その言葉は俺に安らぎを与えるような類の言葉ではなく、というより、あの出来事自体に慰めや心配なんて通用しそうに無い。
けれど、嬉しい事だけは確かだった。
こうやってのんびり外を歩ける事も、こうやって気になる相手と喋る事が出来るのも、あの時の俺は考えもしなかったんだ。

「なにが、どう、良かったんだろうなぁ・・・もちろん、お前にとって」
黙ってくれないかと懇願しても、彼は囁き続ける。俺への呪いを。俺への恨みを。俺だけに聞こえる声で、俺にしか見えない姿で。

それじゃ、ま、出し惜しみなんてせずに思い返してみよう。
半年前、乾いた空気にザラついた皮膚が悲鳴を上げて裂けるような、それは寒い寒い2月のお話。
俺こと木藤リュウヤと目の前の幻覚・・・厚手のコートを着た中年男性、黒峰冨士哉との馴れ初めを・・・



「そうそう、あの靴ってクロックスって言うだ。覚えとけよジョシダイセー」
「カナメ真空とび膝蹴りっ!!」

ドゴォ!!

「良いモン・・・もらったぜ・・・」



<雑記>
PS3を買うべきか真剣に迷った。エロゲとかなら淀み無く購入する事が出来るのに・・・
さて、唐突に小説復活。というかオチまでは一応考えているのですが、書く気が起きない。求められているとも思えない。

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