鼠の騙し討ち

太刀打できますん

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自分は潔癖症なのかもしれない、と思うことがある。部屋の掃除をしてゴミを出し、週に一度は雑巾を片手に棚やらを拭くくらいには、人並みに綺麗好きの感覚はある方だが、それ以上に在るべきものが特定の場所にないと落ち着かない。
冬物の上着ならハンガーラックの後ろの二番目から、夏物のズボンなら箪笥の一番下、ご飯を食べる時の味噌汁の位置、バスに乗るなら前から三番目の席で、そこが空いていないなら空くまで前に立っている。自分なりのルールを準拠出来なければ、どうにも据わりが悪い。

何もかもには、在るべき場所と言うものが存在するはずだ。その場所無くしては、何もかもが存在できないはずだ。

窓を見ないうちに雨が降り、耳は雨音を聞き逃し、目を閉じているうちに止んでいていたなら、その雨を感じ取るのはいつか?
濡れた建物や地面を見たとき。かかすかな蒸気でむせ返る夏のコンクリートの匂いを嗅いだ時か。どれも違う。水溜りに足を入れたとき、雨が降っていたのだと認めている。
自分が濡れている事が条件で、また、友人が突然の雨に降られて愚痴を零していた時も同じく、雨が降ったことを感じ取る事ができる。自分の延長線上が雨に濡れたのなら、それは雨が降ったことなのだ。
その時降っていた雨に濡れなければ、どれほど痕跡が残っていようと、雨は降っていないのだ。それはあくまで、自分の中のルール。別段、他人との会話でさっきまで降っていた雨の話題になったら、降ってたようですね、と答える。ここで雨なんか降っていないと言い張ったら単に頭のおかしい人と思われるからだ。

ようは印象の問題。雨が嫌なものだと捉えている俺は、雨に降られる事さえなければ、嫌な事がなかった=雨が降っていなかった、となる。
在るべきイメージから消え去ったものに意味は無い。在るべきイメージに居るからこそ、それに意味が宿るのだと思うことにしている。

だから、本来無いはずのものが目の前にあるのが、堪らなく不愉快だ。

「どうしたんだ、浮かない顔をして。まるで幽霊にでも取り付かれた様だ」

そいつはまるで夏の陽気を無視するかのように厚手のコートを羽織り、ごく平然と汗もかかずに佇んでいる。
そう話しかけてきたそいつが、幽霊だったほうが何倍かマシかもしれないと思う。一度として幽霊と言うものを見たことの無い俺にとって、周りが幽霊の話題で騒いでいる時には一人疎外感を感じていたからだ。見たことは無いが、それでも幽霊を恐いと思ったことはある。しかし、感じた事のないものに意味を見出せない自分にとっては、幽霊を見ることができたという漠然とした大衆幽霊意識が自分にも宿ったと、ここぞとばかりに周りの怪談話に食いついていける。感極まって泣き出しそうなほど喜ばしい事だ。

「人前で話しかけんな。見苦しいから。主に返事をしている俺が」
「だろうなぁ」

目の前でニヤニヤと笑いながら話しかけてくるソレは、周りの通行人がぶつかりそうになっても動こうとしない。通行人も避けようとしない。その必要が無いからだ。
思ったとおり、通行人はそいつの体をすり抜けて歩いていく。こちらを訝しみながら。そりゃそうだ、誰も居ないところで突然俺一人が話しかけたように見えてるだろうから。

「お前も難儀な事になっちまったよな。俺なんかに取り付かれちまって。同情するぜ?」
「結構だ糞野郎。それに取り付かれたってのはちょっと違うんじゃねぇの。お前、幽霊なんかじゃないし」
「似たようなモンだろうが」
「あいつに見えなかったから違うだろうよ。俺は幽霊って認めてねぇよ」

俺には霊感の強い友人が居る。旅行先で必ず「この部屋は駄目ー危なすぎるよーこっちにしよー。だってほらほら、この部屋の絵画の裏に御札が貼っててプチ恐怖―!! ってかジッと見てると血痕が浮かんでくるんですけど・・・(ここだけ真剣な声色)」と逐一報告してくれるほどのお茶目っぷりで、他の友人を震え上がらせている。
最初、目の前のこいつが幽霊かと思った俺は、その霊感と灰汁の強い友人の所へと出向いたが頑として反応なし。友達甲斐の無い奴だ。嘘でもいいから「取り付かれてるよーお終いだよー、来ちゃったよね、世紀末っ!!」と言ってほしかった。切に。

「死んだ人間が目の前でお喋りしているんだから、そりゃ幽霊以外の何者でもないさ。別の何かに置き換える必要は無い。自分がそう思ったとおりに生きればいいのさ」

なんて前向きな死者なんだろうか。見習うべきかも知れない。
という愚にも付かない冗談に笑える余地は無く、目下のところ俺は幻覚風情に見下され中だ。

死んだはずの人間が目の前に居る。
止んだ筈の雨に降られている。
どうやら俺は、水溜りに足を突っ込んでしまったようだ。



<ここから雑記>
ブログにネタがない、と言う事でweb小説を書いてみました。ネタがないのに小説書くってどんだけー。
思いつきで書いただけなので、続かないかもしれないし続くかもしれません。
オチとか考えずに書き始めたもので・・・どうしよう。

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